すすきのの暗がりに灯る昭和の炭火。2026年、世界中の食通が札幌「ウタリ」を目指す理由
炉端 焼き ウタリは、札幌・すすきののビルの隙間にひっそりと佇む、北海道最古級の歴史を誇る炉端焼きの名店だ。ガラリと引き戸を開けた瞬間、香ばしい炭の匂いと煙、そして数十年の年月を経て飴色に燻された重厚な木造梁が訪れる者を迎える。デジタル化や洗練された近代店舗が加速する2026年の今、この場所だけは昭和の時間をそのまま閉じ込めたかのような独特の熱気を放ち続けている。
北海道の厳選素材を目の前の囲炉裏で豪快かつ繊細に焼き上げる炉端 焼き ウタリのスタイルは、国内外の美食家たちの心を掴んで離さない。巨大な木製しゃもじ(カウンター越しに料理を渡す伝統の道具)に載せられた熱々のキンキやホッケが目の前に運ばれてくるとき、店内からは歓声とため息が漏れる。
創業昭和29年。すすきのの歴史と共に歩んだ伝説の暖簾

札幌・すすきのの繁華街。ネオンが眩しく輝く大通りから一本路地に入ると、築数十年の味わい深い木造建築が異彩を放っている。「ウタリ」という店名は、アイヌ語で「仲間」や「同胞」を意味する言葉だ。その名の通り、創業以来、地元北海道の飲兵衛から遠方からの旅人まで、あらゆる人々を区別なく温かく迎え入れてきた。
店内に一歩足を踏み入れれば、中央に鎮座する大きな囲炉裏が目に飛び込んでくる。使い込まれたカウンター席に腰を下ろすと、まるでタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。昭和から令和、そして2026年に至るまで、変わらぬ佇まいを守り続ける姿は、目まぐるしく変化する都市・札幌における貴重な文化財とも言える存在だ。
名物「キンキの塩焼き」と北海道が誇る極上食材の饗宴
ここで味わうべき逸品筆頭は、なんといっても高級魚として知られる「キンキ(キチジ)の塩焼き」だ。備長炭の強い遠赤外線でじっくりとあおられたキンキは、皮目がパリッと芳しく、身はしっとりと脂が乗り、噛むほどに濃厚な旨味が溢れ出す。
もちろん、キンキだけではない。身が厚く締まった大ぶりのホッケ、甘みが凝縮されたホタテのバター焼き、香ばしく焦がした醤油の香りが食欲をそそるじゃがバターや焼きとうきび。どれもが北海道の豊かな海と大地の恵みをストレートに感じさせるラインナップだ。飾らないシンプルな調理法だからこそ、素材そのものの品質の高さが問われる。
長年のカンが冴える「炭火の魔術」と職人の手仕事

炉端焼きの真髄は、火加減の精密なコントロールにある。炭の配置、網からの距離、そして風の通し方。職人はうちわ一本と長年の勘だけを頼りに、食材ごとの最適解を見極めていく。
表面を瞬時に焼き固めて旨味を閉じ込め、内部にはじっくりと熱を通す。この絶妙な火入れによって、魚の脂は無駄に落ちることなく、最高の状態で味わうことができる。パチパチと弾ける炭の音と、立ち上る煙。五感すべてを刺激するライブパフォーマンスは、まさに熟練職人の技の結晶と言える。
2026年のインバウンドが求める「本物のローカル体験」
2026年の観光市場において、外国人旅行者が求める体験は「均一化された高級ディナー」から「地域固有の歴史と生活感に触れる体験」へと大きくシフトしている。その中で、この伝統的な炉端焼きスタイルはまさに理想的な目的地となった。
海外メディアでも紹介され、連日多くの外国人旅行者が暖簾をくぐる。言語の壁があっても問題はない。目の前で焼かれる食材を指差し、職人が差し出すしゃもじから料理を受け取る。その一連の動作自体が、言葉を超えた感動的な体験となり、旅の思い出に深く刻まれる。
昭和の温もりが息づく「ウタリ」での正しい過ごし方
初めて訪れるなら、カウンター席の確保は必須だ。囲炉裏を囲む特等席で、職人の手さばきを眺めながら過ごす時間こそが、この店の醍醐味だからだ。
まずは北海道の地酒や冷えたビールで喉を潤し、本日のオススメを聞く。焼き上がるまでの間、香ばしい煙を肴にちびちびとお酒を楽しむのが通の嗜み。人気店ゆえに飛び込みでの入店は困難なことも多いため、旅行のスケジュールが決まったら早めの予約をお勧めする。
時代の波に洗われながらも輝きを増す「昭和の残り香」
再開発が進む札幌の街並みの中で、変わらない姿で暖簾を掲げ続けることの価値は計り知れない。効率化やコスト削減が叫ばれる現代において、炭起こしから片付けまで手間を惜しまず伝統を守り抜く姿には敬服させられる。
炭火の熱気と人の温もり。そのふたつが交差する古びた木造店舗には、現代人が忘れかけた「食の原点」がある。2026年も変わらず、この小さな囲炉裏の周りには、美味しい料理と笑顔を求めて人々が集い続ける。 (出典: 炉端 焼き ウタリ(Yahoo!ニュース))