北陸新幹線延伸から2年、伝統工芸の聖地が魅せる「本物の体験」——石川・加賀の森で今起きている静かな熱狂
ゆ の くに の 森は、北陸新幹線の小松駅・加賀温泉駅開業から2年が経過した2026年の今、国内外から訪れる本物志向の旅人を惹きつけ続けている。約13万坪におよぶ広大な自然の森の中に、江戸時代から明治期にかけて建てられた茅葺きの古民家が点在するこのテーマパークは、単なる観光施設にとどまらない。能登半島地震からの伝統工芸復興のシンボルとして、また日本のクラフトマンシップを体感できる「生きている美術館」として、新たな熱気と洗練を帯び始めている。
金沢の華やかな街並みから少し足を伸ばした小松市粟津温泉の山間に広がるゆ の くに の 森には、九谷焼や加賀友禅、金箔貼りなど50種類以上の伝統工芸体験が集結している。静寂な木々に囲まれた敷地を歩けば、職人たちの息遣いと土やうるしの香りが漂い、訪れる人々をタイムスリップさせたかのような感覚に包み込む。
北陸新幹線延伸がもたらした「深掘り型観光」の波

2024年春の新幹線敦賀延伸によって、首都圏や関西圏からのアクセスは飛躍的に向上した。だが、2026年の観光トレンドは単なる「有名観光地の駆け足めぐり」ではない。旅人の目的地は、より濃密で文脈のある文化体験へとシフトしている。
小松駅や加賀温泉駅から車でわずか15分から20分という好立地も手伝い、旅の途中で立ち寄るのではなく、「工芸に没頭する一日」を目的に訪れる旅行客が急増した。特に海外からのリピーターや、都市部の喧騒を離れてマインドフルネスな時間を求める若年層の姿が目立つ。
古民家が立ち並ぶ13万坪の森:五感で味わう季節の移ろい

敷地内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは苔むした庭園と重厚な茅葺き屋根のコントラストだ。北陸の厳しい冬を越えて芽吹く新緑、夏の深緑、秋の鮮やかな紅葉、そして雪化粧した静寂の世界。13万坪という広大な森は、四季折々に異なる表情を魅せる。
全国から移築された豪農の館や豪雪地帯の古民家は、それ自体が貴重な建築遺産だ。木々を吹き抜ける風の音や小川のせせらぎを聞きながら径を辿る時間は、都市生活で疲弊した五感を鮮やかに呼び覚ましてくれる。
九谷焼から金箔まで:観るだけではない「職人の手仕事」への没入

ここでは、見るだけの鑑賞は主役ではない。自らの手を動かし、作品を作り出すプロセスこそが醍醐味だ。館内では、鮮やかな赤や緑の絵の具で描く「九谷焼の絵付け」、極薄の金箔を繊細な作業で貼り付ける「金箔工芸」、加賀友禅の型染め、さらには手すき和紙やガラス工芸など、多種多様なワークショップが連日開催されている。
土の感触や金箔の軽やかさに直接触れる瞬間、息をのむような集中が生まれる。現場で指導にあたる職人の手技を間近で見ながら仕上げた世界に一つだけの作品は、旅の記憶を刻むかけがえのない記念品となる。
被災からの歩みと継承:伝統工芸の未来を繋ぐ職人たちの情熱
石川県が誇る伝統工芸のネットワークにおいて、この森が果たす役割は近年さらに重みを増している。能登地域の輪島塗や珠洲焼など、震災で打撃を受けた産地の職人や技術者を支え、その技を次世代や観光客に伝えるプラットフォームとしての機能が強化されたためだ。
若手職人の育成プログラムや、現代のデザイン感覚を取り入れたコラボレーション作品の展示も盛んに行われている。歴史を守るだけでなく、時代に合わせて進化し続ける工芸の「今」がここにはある。
食と憩いの新たな進化:地産の味覚が彩る贅沢な滞在時間
散策や体験を満喫した後に欠かせないのが、北陸の豊かな食材を活かした食の楽しみだ。古民家を改装した食事処やカフェでは、地元・加賀の旬の野菜や山菜、手打ちそば、近海で獲れた海の幸を使った料理が味わえる。
九谷焼の器で提供される抹茶や和菓子のセットは、目でも舌でも愉しめる贅沢なひとときだ。最近では、ヴィーガン対応のメニューや地元クラフトビールの提供など、多様な旅行者のニーズに応える食のアップデートが進んでいる。
2026年最新ガイド:アクセスと巡り方のコツ
訪れる際は、時間に十分な余裕を持ったスケジュールを組むことを強くお勧めしたい。体験メニューによっては事前予約がスムーズなものもあるが、広大な敷地全体をゆったりと巡るだけでも最低3時間は見ておきたいところだ。
アクセスは北陸新幹線「加賀温泉駅」または「小松駅」からのバス・タクシー利用がスムーズ。近隣の粟津温泉や山代温泉、山中温泉に宿を取り、温泉街の湯巡りと組み合わせて滞在するのが2026年の王道ルートとなっている。 (出典: ゆ の くに の 森(Yahoo!ニュース))